1月の大阪展でオーダーいただいたUウイングチップが完成、5月後半に納品しました。
ファッションのこだわりも強くアメリカンビンテージ靴(ビン靴)にもお詳しいお客様、50s前半と思しきパーフォレーションによるベンチUウイングの写真をお持ち込みくださいました。
もしベンチレーションが作れるならオーダーしようかと思っている、とのお言葉。
アーチケリーとしてもいつかは作りたいと思っていたベンチの靴を制作させていただく機会となりました。
かつては、暑い夏を涼しく快適に履けるよう、ビン靴ブランドの春夏カタログにはベンチレーションの靴が掲載されていました。
今回のようなパーフォレーションによるもの、ナイロンメッシュのもの、革を編み込んだメッシュのものと時代によって様々ですが、今回のパーフォレーションのものは中でも30sからの旧い時代に多く見られるかと思います。
30sはアールデコ調のデザインが靴にも取り入れられた時代。40sの終わりくらいまではアールデコなステッチとパーフォレーションをミックスさせたようなベンチレーションシューズも散見されました。
パーフォレーションのデザインはディレクターである私に一任されたとはいえ、アールデコ調を取り入れるかどうかはお客様に確認したいということで、パターンをいくつか提案させていただきました。
決定したのはアールデコ要素の少ないパターン(右下)。
ちょうど手元に50sフローシャイムのベンチレーションがありますが、これに近い形に落ち着きました。
今回のオーダーのこだわりはこれだけではありません。
タンカラーのアッパーに合わせるステッチの色、コバの出し縫いに使う糸の色をそれぞれご指定いただきました。
アッパーステッチはタンカラーより少し暗い色、出し縫いも通常の白ではなく生成りの色に変更しました。よりビンテージ感が出る仕上げに。
アーチケリーの特徴でもあるコバの張り方はむしろ抑えめに、踏まずのセミスペードソール(半イカ)も設定せず、参考にしたフローシャイムのモデルに寄せた仕上げにしました。
ソールは5mm厚に。アーチケリーでは通常4mmに設定しておりスッキリとドレス感を出していますが、5mmではどっしりした印象になります。これも参考にした靴に寄せにいった仕上げです。
ライニングはレザーを選択。
ステッチ、パーフォレーションが多い今回のアッパーでは、撚れやほつれの心配のないレザーのほうが完成度が高いだろうとの見込みでお奨めしましたが、予想通りの素晴らしい仕上がりになりました。
タンパッドはフェルトを使っていますが、紐を締めたときの足あたりが柔らかいのでお奨め、未体験の方には一度味わっていただきたいです。
素敵なオーダーありがとうございました!
S-1611
Ventilated U-Wing TIp Oxford
Tan Calf
ソールエッジ:ブラウンビンテージ
ソール:レザーソール(5mm) / ラバートップリフト
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